発達障害かもしれない――そう感じたとき、「本当に診断を受けるべきなのか」「受けることで子どもにラベルを貼ってしまうのでは」と悩むご家族は少なくありません。診断によって見えてくることもあれば、逆に新たな不安が生まれることもあるからです。
診断を受けるかどうかは“正解”がある問題ではなく、家族の価値観や状況に応じた選択肢があるということです。
この記事では、発達障害の診断を迷うご家族に向けて、考慮すべき視点や、診断のメリット・デメリット、受診前に整理しておきたいポイント、そして診断以外にできる対応策などを筆者の実体験を交えて具体的にご紹介します。家族として納得のいく選択をするために、ぜひ参考にしてみてください。
発達障害の診断を迷う理由とは?
家族が抱えやすい不安や葛藤
発達障害の兆しを感じたとき、最初に直面するのは「この子に障害があるのでは」という不安です。それに続くのは、「親としての育て方が悪かったのでは」「自分の責任ではないか」という葛藤。診断を受けることによって、そうした感情が否応なく現実味を帯びてくるため、躊躇してしまう方も多いのです。

自分のせいだと思ってしまうんだね…
「診断=ラベル付け」という誤解
発達障害の診断に対して、「一度診断がついてしまうと一生消えないラベルになる」といった不安を抱く声もあります。しかし、診断は“固定化された烙印”ではなく、子どもが必要とする支援を明確にするための手段です。
この誤解が解けないままでは、診断そのものを避けたくなるのも無理はありません。



支援のための診断という意識が大事ですね
周囲の反応や将来への影響を懸念する声
「学校や地域に知られることで差別や偏見が生まれるのでは」「進学や就職に影響するのでは」という将来への不安も、診断を迷う理由の一つです。


確かに日本社会ではまだ偏見が根強く残っており、こうした懸念が現実的であることも否定できません。
診断を受けることのメリットとデメリット
診断によって得られる支援や理解
発達障害の診断を受けることで、医療や福祉、教育などの公的支援がスムーズに受けられるようになります。たとえば、通級指導や療育、福祉手帳の取得など、環境調整の幅が広がるのです。また、周囲の理解が得やすくなり、家庭内でも対応が具体的になるケースが多くあります。



診断がスタート地点になる感覚ですね
「診断されないこと」によるリスクとは
一方で、診断を受けずにいることで、支援が受けられず、子ども自身が「なぜうまくいかないのか」と自己肯定感を下げてしまうこともあります。周囲の理解を得られないまま学校生活を過ごし、二次障害を引き起こすリスクも無視できません。
二次障害とは、特性への誤解や対応不足により、不安・抑うつ・問題行動などが二次的に起こる状態を指します。
メリット・デメリットを比較するときのポイント
判断の際には、短期的な感情ではなく、中長期的に子どもの生活に何がプラスになるのかを基準に考えることが重要です。「今」ではなく「将来」の選択肢を増やすという視点から、診断の意義を捉え直すことが大切です。



診断そのものを目的にせず、支援を受けるための“手段”と考えるのが本質です
家族としてどう向き合う?判断のための視点
子どもの困りごとを具体的に整理する
まずは「発達障害かどうか」ではなく、「どんな場面で困っているか」を明確にすることが出発点です。たとえば、集団行動が難しい、言葉のやりとりに遅れがある、感情のコントロールが苦手など、困りごとはさまざまです。
その具体的な実態を把握することで、必要な支援が見えてきます。



困ってるのは子供本人なんだよね…
本人の気持ちを尊重する大切さ
本人が年齢的に状況を理解できるならば、「どうして診断を受けるのか」「何のためなのか」を一緒に考える姿勢が必要です。子ども自身の不安や希望に耳を傾けながら、無理のないペースで進めることで、納得感のある選択につながります。



本人に“決めさせる”のではなく“一緒に考える”気持ちが大切です
家族の価値観や将来像と照らし合わせて考える
「診断を受けるべきか」は家庭ごとの価値観によっても異なります。「診断よりも日々の生活の安定を重視したい」「将来的に制度を活用したい」など、家庭の考え方を明確にすることで、より納得のいく判断ができるでしょう。



たくさん悩んだ決断に“うちの子にはこの道が合っている”と胸を張しましょう!
診断以外にできるサポート方法
支援機関の活用(相談支援センター・保健センターなど)
各自治体には、発達相談ができる窓口があります。発達障害の疑いがある段階でも利用可能で、親子の関係づくりや行動の見立てについてアドバイスが受けられます。
専門家に話を聞いてもらうだけでも、大きな安心感が得られます。
学校や園でできる環境調整
診断がなくても、保育園や幼稚園、学校との連携によって環境調整が可能です。たとえば、座席の位置や指示の出し方の工夫、特定の活動のサポートなど、本人の特性に合わせた対応が受けられることもあります。



診断があってもなくても「支援は必要な子に届ける」姿勢が大切です
発達支援・療育の利用は診断なしでも可能?
多くの地域で、発達障害の診断がなくても、一定の評価を受ければ療育や支援サービスを受けられる仕組みがあります。診断を迷っている間も、必要な支援にアクセスできる手段があることは大きな助けになります。
診断を受けることを選んだ家族の体験談
診断によって前向きになれたケース
「診断がついたことで、子どもに合った支援が受けられた」「家庭での接し方が明確になった」と感じる保護者も少なくありません。診断がゴールではなく、支援のスタートであることを実感するケースです。
筆者自身も息子が2歳2ヶ月のときに初めて医療機関を受診しました。予約には1ヶ月ほどかかり、「3歳まで待てるか!」という気持ちで踏み切ったのを覚えています。初診では「自閉傾向」と言われましたが、その“傾向”という言葉に戸惑い、確定ではないのか、これは正式な診断なのかと混乱しました。当時は知識も乏しく、その時は診察のみで正式な発達検査ではなかったため、後から考えると“傾向”と表現されたのは当然だったのだと理解しています。
診断書が出るわけではなく、「療育に行くと効果的だろう」との医師の判断で療育への打診票を書いてもらいました。そこには「自閉症」というワードは記載がなかったことも記憶に残っています。通常は保健センターなどで複数回の面談を経て療育につながるケースが多いため、医師経由でのルートはやや例外的だったようです。
迷いながらも納得して選択したプロセス
その後、療育だけでは不安が拭えず、言語リハビリを目的に改めて医療としっかりつながることを決意しました。2歳7ヶ月のときに初診の予約を取り、再び1ヶ月待ちで受診。このとき、発達検査の必要性を尋ねたところ、主治医の先生からは次のように言われました。
「親の気持ちも大事です。まだその状態じゃないなら無理して受けなくていい」「発達検査は自閉症を白黒つけるためのものではなく、子どもの現状を知り、より適切な支援に活かすためのものです」
その言葉に、まるで有罪無罪を決めるような心持ちでいた自分の気持ちがふっと軽くなり、「息子のための支援が受けられるなら前向きに受けよう」と思えるようになりました。
筆者の家庭でも、その後通っていた保育園で支援の限界を感じ、転園を促されました。実質的に“退園勧告”のように受け取れる状況に、不安とショックを抱えたことも記憶に残っています。園長先生からは発達検査の時期について何度も尋ねられ、追い詰められる思いがありましたが、主治医の先生は「私の名前を出して、『医師が今は年齢的に受けるべきではないと判断した』と言ってもらって大丈夫です」と伝えてくれました。



この一言に、どれだけ救われたか分かりません
結果的には発達検査を受け、その後転園しましたが、検査結果や診断の詳細を園に伝えることなく、新たな環境へと進みました。この選択もまた、一つの「家族なりの判断」だったと思っています。
「診断しない」という選択をした家庭の考え
一方で、診断を受けずに家庭内のサポートや学校との連携で乗り越えているご家庭もあります。「診断は必要なときに受ければいい」「今はまだ様子を見たい」という選択も、尊重されるべき判断です。
迷ったときの相談先と行動のステップ
専門機関への相談方法
まずは、地域の発達支援センターや小児科など、身近な専門機関に相談してみましょう。紹介状が必要な場合や、予約が取りにくい場合もあるため、早めの行動がカギとなります。


「発達支援センター」「子ども家庭総合支援センター」などの検索キーワードで、お住まいの市区町村のサイトを確認しましょう。
情報収集のためのおすすめサイト・書籍
信頼できる情報源を持つことは、混乱を避けるためにも重要です。発達障害情報・支援センター(DDネット)や、自治体の保健福祉部門が提供する資料は、実践的かつ信頼性が高いです。



SNSやブログの体験談も参考になりますが、公的機関や医療機関の情報とバランスを取って活用しましょう
焦らず考えるための時間の持ち方
診断のタイミングに“正解”はありません。焦って決断するよりも、情報を集めながら家族で納得できるタイミングを探ることが、後悔のない選択につながります。



ときには「今すぐでなくてもいい」と自分たちに言い聞かせることも必要!
一番大切なのは、誰のものでもない「自分たちの決断」であること。
最後に
発達障害の診断は、家族にとって大きな決断です。
しかし、その選択に正解はなく、何よりも大切なのは“納得感”と“安心感”。



迷った時間もきっと意味がある。その気持ちを大事にしてほしいです
この記事が、あなたの迷いを少しでも和らげ、前に進むきっかけとなれば幸いです。
他にも気になることや、直接聞いてみたいことがあれば、お気軽にご連絡ください。
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